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映画・ゲーム考察

映画『Perfect Days』の周辺の事柄について

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ミレーの絵画〈落穂拾い〉も、映画『PERFECT DAYS』も、「貧困を是として現在の立場に甘んじよ」という金持ち・支配者の思惑に嵌ってしまい、都合よく利用されそうな危うさはある。貧困の是=労働の是=言われたことを「はい!」とすすんで快く引き受けることだから。いくら働いてもリターンはないぞ。

 

一方で、貧しき者の豊かな精神性を認め、尊重することにもなる。旗印、ないしアンセムにもなり得る。作品のもとに集える。

 

これがたとえばバブル期の映画だったら、物質主義・快楽主義や下品さへのカウンターになる。本物を知らぬ成金たちに精神性を叩き込む作品として成立し得る。
けれど今はみんながそういう嗜好じゃない。みんなが貧しさや格差に不安・不満を抱き、権力を「目指すもの」ではなく批判対象として視線を向けている時勢に、あたかもお上から与えられたような清貧の理想像は教条的で、都合が良すぎるように見える。だからみんな警戒する。

 

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映画の土台に「反抗」があれば、人々は信じて流れに身を任せるのだけど、「盲従」が見えてしまうと胡散臭くて跳ね除けられてしまう、ということのようだ

 

 

【追記】映画『PERFECT DAYS』は、「金持ちが想像する「持たない」暮らし(=精神的に豊かな暮らし)」であって、現実のブルーカラー労働者の生活をそのまま反映したものではなく、実際、主人公の精神的な豊かさ(文化人気質や教養)は、彼の生い立ちやかつての暮らしに由来しており、それが定年前後の世代(特に男性たち)と相性がよく、定年前後の世代が理想とする「精神的に豊かな暮らし」を若い世代、特に娘(世代)から肯定されることが中高年男性にとって安心材料なのだ(そして映画はうまく、昨今のアナログブームに、若者と中高年世代との共通点を見出して、物語を進める装置としている)ということを思った。